90秒で始まる恋〜彼と彼女の攻防戦

エレベーターが降りて来て、誰か乗っているだろうとわかっていたが、ドアが開くと、中にいた人物に目を奪われていた。

うわっ…
同じマンションに、こんな素敵な人がいたんだ。

入居してすぐに、世界的にパンデミックが流行し、公衆の場ではマスクが必需だったが、流行も落ち着きマスクをすることもなくなって、朝からマンションの住人と会うのは、初めてだった。

およそ180センチはあるだろう身長、小さな顔の中に整った目鼻立ちは、誰もがイケメンだと言うだろう。

マスクなしで合う初めての住人に、ぼーとしていたら、エレベーターの開ボタンを押さえ苛立ったように声をかけてきた。

「乗らないの?」

「あっ、の、乗ります」

慌てて乗り込み、背を向けてドアの前に立ったのだ。

「マジか⁉︎…なぁ〜」

背後で呟く声が聞こえても、自分には関係のない彼の独り言だと思い聞き流し、イケメンとの密室にドキドキしていたが、どうやら話しかけられていたらしい。

「なぁ、無視か?」

「私に話しかけてたんですか?」

「そう…あのさ…言いにくいんだけどパンツが見えてる」

えっ…えー
慌てて腰を捻ってスカートの裾がパンツ中にあることを目視と同時に直し、意味もなくスカートの上からお尻を撫でて男を見つめた。

「………み、見ましたよね」

目をそらして頷いた彼。

なんて事だ…

スカートの裾をパンツの中に巻き込んでいたなんて。

素敵な人だと思った人に、パンツを見られるなんて。