呼び止めたくせに用事がないならと、私は彼を置いて歩き出した。
その後をついて歩いてくる向井さん。
同じマンションに住んでいるので、ついてくるなと言えない事にムカムカしてきて、どこか寄って帰ろうと考えた私は、週末の食料でも買って帰る事にし、マンション近くの深夜まで営業しているスーパーに寄った。
だが、彼はマンションに向かわず同じスーパーにいて…なぜかカートを押す私の隣にいる。
「あの…ストーカーですか?」
「そんなわけないだろう…」
「…私、野菜コーナーから買い物するので、向井さんは、お先にどーぞ行ってください」
「俺も、野菜コーナーから買い物するつもりでいる」
はぁっ?
あーもう、無視だ無視、無視…
この人と会話にならない。
私は、明日のメニューにカレーを考え、ジャガイモ、人参、玉ねぎといれ、精肉コーナーへ。
隣に立った向井さんが、カゴの中を覗いてふーんと頷いた。
「カレー作るのか?」
「そうですけど」
「最近、カレーって食べてないな」
だから?
「そうなんですか…」
無視を決め込むはずが、つい答えてしまっている。
「ブロックの豚肉、美味いよな」
「私は、挽肉派です」


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