絵梨花と別れデザイン部に急いだが、着いた早々慌てるものだから、台車からマジックの入った箱が落ち、中からマジックがコロコロと転がっていく。
うわっ…やっちゃた。
「すみません…」
周りからの冷ややかな視線が痛い。
最悪…今日はパンツ丸出しに始まって、ついてないのかもと、拾いながら落ち込んでる私に、何本か拾ってくれた人の手から受け取り顔を上げた。
「…ありがとうございます」
「いーえ。莉子ちゃんは、相変わらずのドジっ子だね」
ニコニコと笑うチャラそうな男性は、絵梨花の彼氏の渡部さんだった。
「もう、凹んでるんで言わないでください」
「ごめんね」
ニコニコ顔のその顔は、ちっとも悪いと思ってない。
無駄にイケメンだから、他の人なら頬を染め喜ぶのだろうが、友人の彼だし、なんとも思わない。
「販売促進部の渡部さんが、どうしてこの階に⁇」
「ちょっとね…莉子ちゃんは、今日の夜は来るんだよね?」
「…あー、はい」
「莉子ちゃんの為に頑張ったからね」
ニコリと笑った渡部さんに、首を傾げる私。
「じゃあ、また夜ね」
『はい』と頷いて、私は仕事に戻った。


![(続編)ありきたりな恋の話ですが、忘れられない恋です[出産・育児編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1631187-thumb.jpg?t=20210301223334)
