90秒で始まる恋〜彼と彼女の攻防戦


絵梨花と別れデザイン部に急いだが、着いた早々慌てるものだから、台車からマジックの入った箱が落ち、中からマジックがコロコロと転がっていく。

うわっ…やっちゃた。

「すみません…」

周りからの冷ややかな視線が痛い。

最悪…今日はパンツ丸出しに始まって、ついてないのかもと、拾いながら落ち込んでる私に、何本か拾ってくれた人の手から受け取り顔を上げた。

「…ありがとうございます」

「いーえ。莉子ちゃんは、相変わらずのドジっ子だね」

ニコニコと笑うチャラそうな男性は、絵梨花の彼氏の渡部さんだった。

「もう、凹んでるんで言わないでください」

「ごめんね」

ニコニコ顔のその顔は、ちっとも悪いと思ってない。
無駄にイケメンだから、他の人なら頬を染め喜ぶのだろうが、友人の彼だし、なんとも思わない。

「販売促進部の渡部さんが、どうしてこの階に⁇」

「ちょっとね…莉子ちゃんは、今日の夜は来るんだよね?」

「…あー、はい」

「莉子ちゃんの為に頑張ったからね」

ニコリと笑った渡部さんに、首を傾げる私。

「じゃあ、また夜ね」

『はい』と頷いて、私は仕事に戻った。