ナイトパーティーは二週間後だった。

「まずい……」

 メールで送られてきた招待状に、思わずつぶやいてしまうほど私は追い込まれていた。

「別にバリバリ泳げなくてもいいけど……せめて顔を水につけられるくらいにはなりたい……ちょっと浮かぶとか」

 パーティーだから、きっとビーチボールで遊んだり、浮き輪に乗ったりするくらいだとは思う。
 だが、恐怖で怯えていては周囲から浮いてしまう。

 みっともない姿をさらしたくない。
 私は素早(すばや)くスマホで検索を始めた。

「水泳のレッスン、初心者、マンツーマン、大人……」

 水泳教室はたくさんあるが、子どもと一緒のクラスでレッスンなんて恥ずかしすぎる。

「あっ、これ……」

 見つけたのは、自社の傘下(さんか)企業であるスポーツジムの水泳教室だった。

 夜、仕事帰りに行ける時間帯、マンツーマンの個人レッスンという条件、バッチリだ。
 私は迷わず予約をとった。

「うーん……毎日頑張ってみるか」

 遅めの時間なので、少し残業があっても間に合う。
 少し値段が張るが仕方ない。

「しかし、さすが我が社……」

 イチイフィットネスは全国展開しているが、特に大人の女性をターゲットにしたアクティビティやレッスンに力を入れている。
 大人になってから始めるバレエ、軽めのキックボクシングなどに混じって、水泳の個人レッスンがあるとは。

 ただ、問題は知り合いに会わないか、ということ。
 福利厚生でイチイフィットネスを割り引きで利用できるのだ。

「髪を一つにまとめて、眼鏡をかけて……そっと入れば大丈夫かな」

 レッスンになればマンツーマンだし、きっとバレない。
 そう私は思ってしまったのだ。