ピンポーン

「ゆずー!れんくん来たわよー!」

お母さんの呼ぶ声がする

「はーい!今行くー!」

ネクタイの形が変だけどいっか。

ガチャ

「おはよ!れん!」

「おはよー。ゆず」

彼は幼馴染の橘 れん
小学生の頃から海外に住んでいたけど高校生になる春に日本に戻ってきた。

「今日もかわいーね。」

そして、なぜか溺愛されている。

「いや、かわいくないし!れんの近くに可愛い女の子
 いっぱい居るよ?」

そして、イケメンなためモテる

対して私。

平凡で特に頭がいいとかもなし。

あれー、おかしいなー。

普通こーゆーのって可愛い女子だよね?

まぁ、いいんですけど!

一応料理できるし?掃除も洗濯もできるからね!

れんはー、まぁ、うん。

全部完璧にできるけど。

「ねぇねぇ、ゆずー」

「ん?」

「ねむい。」

いや、知らんわ!

「昨日何時に寝たの?」

てか、れんの寝た時間とかどうでもいいんですけどー。

「んーと。わかんない」

「わかんないって何それ…」
 あきれて横を見たら、れんはふわぁって大きく
 あくびした。

「だってさ〜、最近ゆずと一緒に住む準備してたら
 色々やることあってさ。忙しいのー」

「え、ちょっ…そんなの私初耳なんだけど?」

「うん。まだ言ってないもん」

え、なんでドヤ顔してるの?
かわいすぎて私の心臓に悪いんだけど?

歩いているうちに、学校の門が見えてきた。

そこでれんが急に立ち止まった。

「……あー、めんどくせぇ」

さっきまで眠そうだった目つきが、一瞬だけ
"昔のれん"みたいに鋭くなる。

門の前で騒いでいた上級生たちが、れんと目が合った
瞬間シーン…って静かになった。

「あれ、橘じゃね?」
『うわ、本物だ』
『戻ってきたのかよ』

小声でそんなこと言われてるけど、れんは気にしない。

「ゆず、こっち」

すっと私の手を引いて、周りの視線を全部無視して
歩き出す。

「れん、今の何…?」

「ん?別に。ゆずに変なやつ寄らないようにしただけ」

その言い方に、じわぁっと胸が熱くなる

「ほら、教室行こ。ゆず遅刻しちゃうし」

さっきの怖さなんてなかったかのように、いつもの甘い声で笑うれん

……いや、ギャップすごいな。