さぁ殿下、流行りの婚約破棄をいたしましょう


「そ、そうか。なぜシャルロットはサンドリーヌにキツく当たるのかと思っていたが、嫉妬をしていたのか!」

徐々に嬉しそうに声が大きくなってく。

とんだ勘違いだ。なぜ私が嫉妬しなくてはならないの。

けれど、殿下は紫色の瞳を輝かせて私に尊大な笑みを向けた。

「シャルロット。そういうことならば、学問や経営だけでなく、もう少し女性としての在り方を学ぶといい。この学園には手本になる令嬢が多くいる。彼女たちを見て、愛される女性がどういった振る舞いをしているのかを知るがいい」

殿下の言い放った言葉に、私は目を見開いて絶句した。それは、周囲の高位貴族の子息令嬢も同じだったらしい。

学園の中庭が、耳が痛いほどしんと静まり返る。

彼は一体、なにを言っているのかしら。

反論がないのを勝利と確信したのか、ことの成り行きを見守っていた下位貴族の令嬢たちが一斉に笑い声をあげた。

「そうね、シャルロット様は愛らしく見える振る舞いを学ばれるべきだわ」
「女性が領地経営など学んだところで、ねぇ?」
「せっかく素敵な婚約者がいらっしゃるのに、愛される努力を放棄するなんて、女性としていかがなものかしら」
「まぁ、皆様。あまり口々に言っては、シャルロット様に失礼ですわ」

私を嘲笑う令嬢たちを、サンドリーヌ様が口先だけで窘める。けれど、彼女の表情には隠しきれない勝利への喜びが溢れていた。

「次の夜会は一週間後だったな。久しぶりにルクレール家まで迎えにいってやろう。学んだ成果を楽しみにしている」

なにも言い返さない私に、殿下は上機嫌でそう告げた。私を迎えに行く発言が気に入らなかったのか、サンドリーヌ様は愛らしい顔を歪める。

それに気付かぬ殿下は、ご機嫌な鼻歌でも歌いそうな様子で取り巻きを引き連れて去っていった。