「おはよう。何処に行ってたの?」
 彼は、キッチンで軽い朝食を用意していた。
「おはよう。早くに目が覚めちゃったから、散歩にね」
「珍しいじゃない」
 私は、この朝の散歩で見たもの、感じたことのすべてを、何故か彼に話したくて仕方なかった。
 私と違い、外で仕事している人だから、もうとっくに知っている景色かもしれないけれど。
 しかし、彼はこれから出勤なのだから、のんびりおしゃべりしている時間はない。
「なんだか嬉しそうだね。散歩中、お金でも拾った?」
 そう言ってからかう彼。
「あ、せっかくいい話しようと思ったのに、ぶち壊してくれたね」
「ごめんごめん。何?いい話って」
「ん?ゆっくり話したいから、今はやめておくわ」
 彼は、私の分も朝食を用意しておいてくれた。
「ありがとう。たまに早起きした時ぐらい、私が用意したらよかった⋯⋯」
「いいよ。料理は僕のほうが得意だしね」