初めて来た場所に、軽自動車では上れなさそうな、短くも危険すぎる急坂があった。
 徒歩で下りても、爪先が痛くなりそうだから、迂回しよう。
 少し南下し、更に東へ左に折れると、小さな公園があった。この町には、小さな公園があちこちにある。
 公園の花壇には、赤と黄色の可愛い花が咲いている。何の花だろう?どう見ても野生の花ではないから、誰かがちゃんと手入れしているということだろう。
 更に東へ向かうと、そこには長い階段が隣町へと続いていた。この階段を下りないと、隣町には行けないようなので、車両だと、ここで行き止まり。
「こんなところに階段があったんだ⋯⋯」
 時計は持ってきていないが、日の出時刻なのか、オレンジ色の太陽がゆっくりと昇り始めていた。
 丘の上から見下ろす町は、ほんのりと朝もやに包まれ、左手には名も知らぬ山並みが見える。
 手ぶらなので、花の名前も、山の名前も調べようがない。