穏やかすぎる愛に包まれて

 目の前でオロオロする彼が、なんだか可愛く思える。もうオジサンと呼ばれても文句は言えない年齢なのに。もっとも、年齢に関してはお互い様だが。
「話が戻るけど、今朝、この高台から見た夜明けは、毎日見たいぐらい美しかったの。それに、階段を下りて隣町まで行ってみたいし、遠くに見えたやたら長い階段も、あれは何処に続いているのか気になるわ」
「そんなに素敵なら、次の週末、一緒に行ってもいいかな?」
「ええ。誘うつもりだったから」


 土曜の朝はどしゃ降りだったが、日曜は見事に晴れた。
 この前は手ぶらだったから、今回はインスタントカメラも持って。
「デジカメとかiPhoneじゃないところが、なんだか⋯⋯らしいよね」
 彼はそう言って笑うけれど、
「あら。私たちの子供の頃とか、再会した頃の写真は、大体みんなこれで撮ってきたじゃない。逆に、ケータイにカメラがついてからはあんまり撮らなくなったような?」