そう尋ねられ、私は、いつもの癖で無意識にボールペンをカチカチ鳴らしていなかったかとか、ヘッドホンから音漏れしていたのではないかと気になった。
「あ⋯⋯ごめんね。うるさかったかな？」
「いや。だけど、最近やたらクマを気にしてたから」
「ふたつ隣の町では、住宅街でも普通にクマが目撃されてるし、真冬でさえも目撃されたってニュースでやってたわね」
「いやいや、そっちのクマじゃなくて。目の下のクマ」
　そう言って、彼はそっと私の頬に触れながら、
「色白だもんな。そんなに酷くなくても気になるのかもしれないね」
　最近、年齢のせいなのか、ちょっとでも寝不足だとクマが出来やすく、最近はレンズに薄い色のついたメガネをかけて誤魔化しがちだ。
「色白は七難を隠すどころか、このトシになるとシミもクマも目立って困るわ⋯⋯」
　手元のライトと筆記用具をサイドテーブルに置き、今夜はもう眠ろう⋯⋯と、目を閉じた。