穏やかすぎる愛に包まれて

「安いものを片っ端から買ってきてるのに、よくメニューが思いつくね」
 感心して言うと、
「一人暮らししてた頃は、あんまり料理しなかったけど、やってみると楽しくて」
「そう言えば、家庭的な女っていうと、冷蔵庫にあるものでちゃちゃっと何かしら作れるみたい」
 私にはとても無理だけどね⋯⋯と、心の中で続けたものだ。
 もしかして、本当は彼も、どうせ一緒に暮らすなら家庭的な女性のほうがよかったのではないかと思ったこともある。
 そう尋ねようとしたこともあったが、いつも彼が私に向けてくれる笑顔を見ていたら、それはあまりにも愚問だとわかった。
 私自身、かつて、ルックスのいいエリートに口説かれたこともあったが、その人に乗り換えたいなんて微塵も思わなかった。
 パートナーはどんな人?と聞かれた時、一言で答えるなら“普通の人”だ。
 勿論、私にとっては特別な存在だが、そんなこと、他人は知らなくてもいい。