ベッドの中、小さな灯りだけがほんのりと手元を照らす。
 キャンパスノートを開き、右手には気に入りのエナージェルボールペン。
 ソニーのヘッドホンをして、両耳からは、ジュテーム、ジュテームと、ララ・ファビアンの絶唱が聴こえる。
 歌詞の世界観が、なかなか難解――しかも、私はフランス語が不得手――だと思いつつも、ラブストーリーを創作する時のBGMにはいい。

 ――決して許されない関係と知りながらもよろめき、愛欲に溺れゆく男と女。総ての未来が閉ざされた二人は、出会いの金沢で最後の逢瀬の後、東尋坊へ。そして――。
 かなり雑な人物相関図と、プロットを少しだけ作成したが、全く進まない。
 やはり、才能がないのだろうか⋯⋯。
「ひゃっ!」
 突然、右手に触れられ、思わず小さな悲鳴を上げた。
 隣で眠っていたはずの彼が、何か言っている。
 慌ててヘッドホンを外すと、
「まだ寝なくていいの?」