今回の転勤は、社長からの直々の指名で決まることになりそうだ。

 開発部で淡々と成果を上げる若手社員が話題になり、それはやがて役員から社長の元へ伝わった。

 出張や研修にかこつけて、わざわざ社長と直接会う機会が設けられたほどだ。

 能力、実績、仕事への姿勢。あらゆる面で、明人は社長に気に入られてしまったらしい。

 しばらく前から、開発部から社長直属の部署に来ないかと打診されていた。

 そして来年度は、経営企画部の人員を増やすのだという。

 長期的に見れば、次世代の役員候補を育成する狙いもあるのかもしれない。

「まだ辞令も内示も出てないけど、もうすぐ出るだろうって感じなのね」

「はい。前の年度から、転勤を望まれているのは分かっていました。そして、なんの疑いもなく受け入れようと思っていた」