「いつも優しくしてくれるし、意外とノリがいいし。明人くんと一緒にいると元気になれるし、落ち着くし」

 次から次へと、明人に対して感じていることが口をついて出てくる。
 
 一所懸命な詩乃を、明人はゆったりと見下ろして含み笑いした。

 こうしていると、明人の背の高さがよく分かる。

 長身の体は、詩乃より一回りも二回りも大きくがっしりしていた。

 そして眼鏡の奥の怜悧な瞳が、今は優しく包むように詩乃を見詰めている。

「でも——」

 ドキドキもする——と、うっかり言いそうになって、詩乃は慌てて口を閉じた。

 気がついたら、胸がとくとくと高鳴っていた。

 見上げるような長身の彼と、ばっちり目が合う。

 あの抱擁を、思い出してしまった。掻き抱くような、荒々しい、でも外界の災いから詩乃を守ろうとするかのような力強いあの腕。

「でも?」

 ずい、と、明人が一歩距離を詰める。