「あれ? なんか、元気ない?」

 心配で、思わず言葉が出る。

 明人は少しだけ沈黙したあと、ふっと笑った。

「詩乃さんには、敵いませんね」

 電話越しの声が、少し明るくなる。

「今日、うちで晩ごはん食べようよ……って、言おうと思ったんだけど」

 もしかしたら、具合が悪いのかもしれない。忙しくて、疲れているとか。

「いいかな?」

 遠慮がちに尋ねると、明人はさっきよりも軽快な声色で答えてくれた。

「かまいませんよ。伺いたいです」

「やったぁ」

 ついつい、声が弾む。

 嬉しそうな詩乃の反応を聞いて、明人が忍び笑いする気配も感じた。

「今日は、わたしががんばって作ってみるよ。練習したんだ」

「それは楽しみです」