身を引こうとすると、彼女は確かに、

「やだ。なんで離れちゃうの?」

 と、可愛らしく拗ねている様子だった。

 つまり、ぎゅっと抱き締められること自体は喜んでいたのだろう。

 しかし、その先は?

 その先のことを考えると、明人は頭がカッと熱くなった。

「わたしのこと、女の子扱いしてくれないの……?」

 いったい、どういう意味なのだろう。

 あれはどう聞いても、そういうお誘いに聞こえた。

 据え膳食わぬは、という言葉もある。

 彼女はやはり、あのまま抱かれたかったのだろうか。

 いや。都合よく解釈してはならない。

 とはいえ、明人は決して潔癖という訳ではない。

 これまで幾度となくお誘いはあったし、交際していない間柄で肉体関係を築くことに、抵抗がある訳ではない。

 ただ、一切の興味を持てなかっただけだ。詩乃と出会うまでは。

 しかしどのみち、必要な道具——避妊具もない以上、最後までは出来なかった……?