胸が高鳴る。血が騒ぐ。

 一瞬で抱き寄せられた瞬間、あまりの力の強さに驚いた。

 優しくて、決して乱暴ではない。

 でも、その腕の力強さも、こうしてもたれかかってびくともしない胸板も。

 紛れもなく、男性のそれだった。

「……私も、男ですから」

 明人の声が、微妙な感情を含んでいる。

 まるで自分を抑えているような、なにかを必死で我慢しているような。

「男の人なのに」

 どきどきする胸を抑えて、詩乃が思い切って言う。

「わたしのこと、女の子扱いしてくれないの……?」