突然、明人の腕の中に閉じ込められる。

 詩乃は息を呑んで、ただ身を委ねた。

「明人、くん?」

 暖かい。明人の胸から、体温が伝わってくる。

(明人くんの、匂い……)

 爽やかで、温もりに満ちていて……それでいて、男らしい匂い。

 明人の心臓の鼓動と共に包まれていると、とろけてしまいそうだった。

「……す、すみません」

 明人が、我に返ったように詩乃を離そうとする。

 離れていこうとする体に、詩乃はしっかりと抱きついた。

「やだ。なんで離れちゃうの?」

 つい口をついて出た言葉には、はっきりと甘えた響きがあった。

「こんな……すみません。突然、不躾だったなと」

 明人の声は、戸惑っているようだ。

 顔が熱くなっていくのを感じながら、詩乃は小さく言った。

「こんな、男らしい明人くん、初めて」