また、しばらく時が過ぎた。
早くも、街には冬が訪れてきていた。
明人とは、相変わらずしょっちゅう和やかなおうち会を開催している。
もう幾度となく明人の訪問を受けたが、詩乃が明人の家に行くことはほとんどない。
調理器具は充実しているものの、くつろぐための環境がほぼ整っていないからだった。
明人はもうすっかり詩乃の部屋に慣れ、随分と居心地のよさそうな表情を見せるようになっていた。
いつもお邪魔しているからと、明人はいつも食事の材料費は全て出そうとした。
ただししばらく前、なぜか明人の足が遠のいた期間があった。
あれは詩乃が、「毎週のように家に来るハイスペイケメン」との関係を根掘り葉掘り聞かれた女子会のあとだ。
一週間ほど会っていなかったそのタイミングでいつものように「今夜、うちにおいでよ」と誘った。
すると明人はなぜか目を逸らし、顔を赤くして「少し頭を冷やしたいので」などと言って、断られてしまった。
そのときは、もしかして嫌われてしまったのだろうかと不安になった。
しかしそれからまた数日経つと、いつも通り交流が再開した。
それ以来、明人と目を合わせると、恥ずかしそうに逸らされてしまう。
いまさら人見知りを発揮しているわけでもないだろうし、不思議に思ってはいた。
とはいえ、以前よりずっと、心を開いてもらっている気はする。
笑顔を見せてくれることが増えたし、真顔で冗談を言うことも多い。
冷たい人に見られがちな明人が、詩乃の前ではリラックスしているように見える。
それが、なによりも嬉しかった。
さて、そんな冬のある夕方。
