「! お惣菜が半額!」

 詩乃は、値引きされたパックのお惣菜を喜んでカゴに入れた。

 お出汁がしみしみの肉豆腐。ここのお惣菜は、ほっとする味だ。

 出来るだけ食材を自分で調理するようにしているが、半額なら買っちゃおう、と思った。

(あ。また、あの人だ)

 調味料のコーナーを通りかかったときに、詩乃は彼の姿に気がついた。

 ピシッとしたスーツの男性が、小瓶の調味料を手に取って見比べている。

(これくらいの時間、よく見かけるなぁ。それにしても、スーパーにいるのが似合わないけど)

 真剣な眼差しで品物を見比べる彼の横顔は、あまりにも端正だった。

 冷めた印象を与える切れ長の目、すっと通った鼻筋、上品な口元。

 細いフレームのシンプルな眼鏡が、知的な印象だ。

 とても背が高く、少し圧迫感すら感じる。

 官僚や弁護士のような、堅い職業を思わせるような容姿だ。

(こんな人でも、マメに自炊するんだ)

 前に見かけたときは、鰹節の大袋と小分けパックを熱心に見比べていた。そんなに鰹節が好きなのだろうか。

(なんか、変わった人だな)