「良い友達だよ」

 次々と湧いてくる明人への感情を口にし損ねて、詩乃は簡単に言い切った。

 好きな友達、とは、言えなかった。

 "好き"なんて言葉を使ったら、なんだか恥ずかしい気がして。

「彼の方は、詩乃のことどう思ってるんだろうね?」

 明人は。明人の方は、どう思っているのだろう。

「さあ。少なくとも、好きとか彼女にしたいって感じではないと思うよ」

 言いながら、寂しくなる。

 きっと彼は、自分のことを特別だとは思っていない。

「まあーっ、変わった人だこと」

「甘い雰囲気になったりとかもないし、ほんと」

 あれ、と、詩乃はひとり内心を顧みた。

 明人はおそらく、詩乃のことを女性として意識してはいない。

 それがなぜ、寂しいと感じるのだろう。

「ええー。詩乃と二人きりで室内にいて、抱き締めたい! くらいのこと思わないのかしら」

「あはは。ないない」

 なにやら不満そうな友人たちの声に、片っ端から反論していく。

 詩乃がつれないものだから、話題は徐々に他のトピックに移っていった。