「エリート銀行員が、毎週のように家に……!?」

 友人たちは、詩乃を尋問するように取り囲み始めた。

 女子会向けの個室居酒屋の一室で、注目の的となった詩乃は苦笑いする。

「一緒にご飯作って、おしゃべりしてるだけだよ。だいたい、彼に作ってもらうけど」

「高身長、高収入、高学歴でさらに料理も上手!?」

「高収入かは知らないって!」

 明人の収入について考えたことはないが、そりゃ帝都銀行に勤めてるんなら高給なのだろう。

 詩乃は興味がなかったのであまり知らないが、明人はかなり資産があるらしかった。

 堅実な投資をずっと続けていて、コツコツ積み立てているらしい。

「同棲秒読み!?」

「いや、付き合ってもないんだよ?」

「付き合ってないのに毎週おうちデート!?」

「デートじゃないってば。ただの友達なんだから」

「ただの友達? こんな良い女の家に上がり込んどいて、ほんとに何もしないの!?」

「しないってば! もう、みんな騒ぎすぎ!」

 詩乃はなかば引き気味に、思いっきりツッコミを入れた。

 話さなければよかったかな。と、ちらりと思う。

 友人たちのことは大好きだが、みんなで集まるとどうしてもこんなノリになってしまう。

 なんとなく、明人とのことを周囲に知られたくない。

 いや。知られたくないわけではない。

 あまり、恋バナのネタにはされたくないのだ。

 明人と会うのが楽しいのは、彼がハイスペイケメンだからではない。