明人が初めて詩乃の部屋を訪れてから、数週間が経っていた。

 秋が、深まってきている。

 詩乃の部屋には、ふわふわしたカーペットと座り心地の良い座椅子が増えていた。

 座椅子が二つに増えたのは、もちろん明人と一緒に座るためだ。

 元あったピンクの座椅子にマッチする、ブルーのを買った。

 他の友人が遊びにくることもあったが、そのときは、なんとなく詩乃が元々持っていたピンクの座椅子の方を貸してしまうのだった。

 明人を家に呼んで、ごはんを作って食べる。この楽しい会は、定例になっていた。

 お出かけも何度かしたが、明人は部屋でくつろぐ方が好きなようだった。

 不思議なことに、もうずっと前からこれが二人の習慣だったような気さえする。

 それくらい居心地がよく、和やかな気持ちで過ごせる時間だった。

 今日は、天ぷらを揚げてもらった。茄子、舞茸、蓮根、南瓜。秋に旬を迎える食材はたくさんある。

 自分で天ぷらを揚げたことのない詩乃は、大いにはしゃいだ。

 新しく買った大きな中華鍋で、二人でキッチンに立ったまま揚げたてを摘む。

「えへへ。お行儀悪いかもしれないけど、一緒に揚げたて食べたいもんね」

「じゃあ、これは立食パーティーだということにしましょう。それなら、立って食べるのが正式な作法です」

「あはは。確かに!」

 明人が、完全に真顔で冗談を言う。