よく分からないが、二人ともなんだか楽しそうだ。

 あの無愛想な小岩井さんだって、やっぱりイヤな人じゃなかった。

「やっぱり、詩乃ちゃんが来てくれてよかったわ」

 沙耶が優しく微笑んでくれる。

 そうだ。これだ。

 売上が上がる訳ではない。決して目立つことはない。

 けれど、ゆっくりと周囲と響き合って、やがて暖かい空気が満ちるようなあり方。

 この会社で、今後詩乃が大々的に表彰されるようなことはないのだろう。

 目には見えない。でも、確かに誰かの心に残る働き方。

 わたしがやりたかったのは、これなんだ。

「わたしも! この職場に来れて、よかったです」

 ぐっと胸が詰まった。ずっと探していた場所を、見つけたような気がした。

 考えるより前に、詩乃は元気よく答えていた。