まったくの予想外だった。

 あの明人が、女性に対して何かを感じている。

 その子は——詩乃は——、確実に明人のなにかを変えようとしている。

「そうか」

 もしかしたら、その女の子が、明人の特別な人になるのかもしれない。

 そうなると、茶化すというか囃し立てるのは気が引けた。

「ちょっと。なんで黙るんですか」

 明人が、気まずそうに言う。

 勇悟に対してもめったに見せない、素直な心の内を見せてしまったようだ。

「黙っちゃわりいか! よし、ならオレの話を聞けよ。こないだのライブで……」

 勇悟は、ひとまず話を変えることにした。

 二人の酒盛りは、秋の夜が更けるまで続いた。