「あーこれは春だわ。間違いなく春が来たわ。ついに、あの真壁明人サマに春が。ファンが泣くわ」

「もう秋ですけどね」

 勇悟の顔が、それでそれで? と先を促している。

 明人は、仕方なく思い浮かんだことを言った。

「善良な人ですよ。明るくて、素直で。美人なので、お誘いは多いでしょうね」

「非の打ち所ないな! さすが明人サマだな、このこの」

 なぜこの人は、こうも嬉しそうなのだろう。

 よく分からないが、楽しそうなので放っておく。

「で、進展は?」

「進展したわけではないですが、また会う約束はしましたよ」

「おお……」

 あのあとメッセージでやりとりするうち、自然とまた彼女の家に行くことになっていた。

 不思議なくらい、するっと予定が決まってしまった。

 まるで、元から友達同士だったかのようなスムーズさだ。

 こんなに早く人との距離が縮まったことのない明人にとって、新鮮な体験だった。

「んで、お前はどう思ってるんだ。彼女のこと」

 勇悟が、ずばり尋ねる。