「告白が、遅くなってしまってすみません」

「ほんとだよ……っ。あの夜、もう覚悟はできてたのにぃ」

 明人の胸に顔を埋めたまま、詩乃がいじけたふりをして甘えかかる。

 あの夜というと、もちろん旅先での一夜のことだ。

 甘くほろ苦い、焦れったい思い出。明人の真意が分からず、あのあとどれほどもだもだ悩んだことか。

「やっぱりあのとき、抱いて欲しかったんですか」

 詩乃が顔を伏せたまま、恥ずかしそうにこくんと頷く。

「でも……もういいの。だってこれからは、ずっと一緒だもん……」

 明人の肌が、腕が、暖かい。呼吸と鼓動を間近に感じながら、詩乃は限りない安らぎに包まれていた。

「はい。ずっと一緒ですよ」

 優しい、優しい声が耳に届く。

 温もりに満ちた寝床の中で、詩乃はゆっくりと眠りの中に落ちていった。