簡素な夕食を済ませ、かわりばんこに風呂に入るまでの時間を、詩乃は妙に落ち着いて過ごした。
1LDKの部屋は、ふたりで過ごしていても案外狭くは感じない。
扉の向こうで、明人がシャワーを浴びている。
詩乃は髪を乾かし終わって、部屋着姿で無闇に室内をうろうろしていた。
帰宅するなり、明人に言われた言葉が頭の中にこだましている。
「今夜、泊まってもいいですか」
黙ったまま、こくりと頷くしか出来なかった。
「ほんとに、ただ泊まるだけだったらどうしよう……」
さすがに、文字通りただ泊まるだけではなきはずだ。
だが、今まで明人からそういう欲望をはっきりと感じた機会がないものだから、つい訝しんでしまう。
どうにも落ち着かなくて、詩乃はとりあえず目についた布巾でその辺を軽く拭き掃除することにした。
「泊まるって、つまりそういうことだよね?」
もうとっくにピカピカになっているテーブルの上をていねいに拭きながら、ひとりごちる。
