ほどなくして、二人は閉店時間の迫るスーパーで買い物を済ませて出てきた。

 いつも、二人で買い出しに来ているスーパーだ。

 そういえば確かに、二人とも夕飯がまだだった。

 ついさっきまで何も喉を通らなさそうだったのだが、今はむしろお腹が空いている。

 安心したら、いつも通りの食欲が戻ってきたのだろう。

 もう夜の九時前だ。時間も時間なので、飲み物と少しの惣菜と、明日の朝食を買うだけにしておいた。

「なんか、いいね。こういうの」

 詩乃は、スーパーの袋を提げて言った。

 夜に値引きされた惣菜を買って、家で食べて一緒に寝る。

「いかにも、付き合ってますって感じで」

 シンプルで、ささやかで、でも恋の一番の幸せはこんな夜にあるのだろうと思う。

「まあ、お付き合いしていますから」

 しれっと言う明人の横顔を見上げていると、思わず頬が緩んでしまう。

 まだお付き合いが始まった実感はあまりないが、もう、二人は恋人同士なのだ。