振り向くと、明人が詩乃を見つめていた。
これまでにないくらい、その目に激しい炎をまとって。
「あなたを愛しています」
力強い腕が、詩乃の体を抱き締める。
急に暖かい体温に包まれて、慕わしい明人の匂いに満ちる。
「あなたを愛しています。あなたがそばにいない生活が、もう、考えられないほどに」
押し殺したような、低い、想いを噛み締めるような声。
詩乃の体をすっぽりと覆ってしまいそうな彼の腕は、少し震えていた。
「離したくない。ずっと、あなたのために食事を作りたい」
初めてのことだった。明人が、こんなにも感情的に滔々と想いを語るのは。
何を言うのも冷静で、理路整然としていて、淡々としていた明人。
その彼が今、ただ溢れる想いを流れ出るままに告げている。
「隣で眠って、共に起きて、毎日あなたのそばで暮らしたい。ずっと、こうしてあなたを抱き締めたかった」
苦しそうな、切なげな声。
詩乃の全身を、強く甘い痛みが貫いた。
