明人はいつも、この狭いキッチンで、調理器具を使いこなして料理を作ってくれた。
いつも見ていた後ろ姿が、目に浮かぶようだ。
二人並んで立つには狭いから、ちょっと後ろから彼の料理する様子を眺めていた。
いつものように電気ケトルに水を入れ、お湯を沸かす。
戸棚から茶葉の缶を取り出して開けると、良い香りがふわっと広がった。
こくのあるルイボスティーの香り。明人が好きだった茶葉だ。
「これ、明人くんに分けてあげようかな」
さっ、さっ、と、ティーポットに茶葉を多めに入れながらぽつんと呟いた。
彼が好きだったこの茶葉は、これから一人で飲み切るには多すぎる。
たくさん買いすぎてしまった。明人が、喜んでくれると思って。
「包んであげよ。次にうちに来たとき」
二人で楽しんでいたこの茶葉を、なにか美しい紙布巾に包んで渡してあげよう。
明人に似合う、浅葱色の和紙がいい。
