二つある、赤と青のお揃いのマグカップ。

 部屋で二人で過ごすようになってから、すぐに買い足したものだ。

 ふと、青いマグカップの持ち手のところに、茶渋に似た汚れが残っているのに気がついた。

 台所の水を流しながら、マグカップを洗い直す。

 この青い方のは、明人がいつも使っている。

 柔らかいスポンジで何度擦っても、持ち手についた汚れはなぜか落ちなかった。

「あれ……なんでだろ」

 洗剤をつけたスポンジで、何度も優しく洗う。しかし、汚れは落ちない。

 ひとりの部屋の中に、水の流れる音だけが続いていた。