これまで聞いたことがないくらいはっきりと、冷淡なくらいの口調で、明人は明確に
「駄目ですよ」
と言った。
「……私たちは、そういう間柄ではないでしょう」
絞り出すように言われた言葉を、そのまた思い出す。
……まさか。
詩乃は嫌な考えがよぎって、ベッドから体を起こした。
「そういう間柄ではない」というのは、もちろん正しい。
その通り、詩乃たちは恋人同士でもいわゆる大人の関係でもない。
しかしあれは「そのような関係になるつもりはない」と、オブラートに包んでいたのだとしたら……?
詩乃は、ずきんと胸が痛むのを感じた。
明人が恋人関係になることを望まないのなら、それは仕方がない。
確かにこれまで一度も、明人からそんな要望を感じたことはなかった。
