ハラハラとここまで考えてから、詩乃はゆっくりと深呼吸した。

 いや。少なくとも、共寝や同室が嫌だったのなら、明人はきちんと伝えてくれているはずだ。

 彼はきっちり自分の希望は伝えてくれるし、気が進まないことは気が進まないとちゃんと言ってくれる。

 もっとも、あまり細々としたこだわりのない人ではあるが。

 明人が自分をどう思っているかは置いといて、あの夜、内心嫌がっていたというわけではないだろう。

「それにしても、ほんとカッコよかったな……」

 少し安心したら、詩乃の心はあっという間に甘い想い出の中に漂い始めてしまう。

 風呂上がりの、濡れた髪がいつもと雰囲気の違う感じ。

 眼鏡を外した、意外と可愛らしい顔立ちの印象。

 館内着の作務衣が、ぴったりと似合っていること。

 そして布団の中で感じた、明人の体温と匂い——。

 結局は、あのときめきの最高潮でまた頭がいっぱいになってしまう。

 詩乃はにやにやしながら、ベッドの中でゴロゴロと転がった。

「でも、やけにはっきり「駄目」って言ってたな……」

 手首を抑えられ、のし掛かられて、高揚とドキドキの頂点の中で答えた「好きにして」に対して。