そのまま明人が、詩乃の細い手首を掻き抱くように掴んだ。

「私は……」

 何がなんだか分からないうちに、シーツに手首を縫いつけられる。

 覆い被さるように迫る明人が、詩乃の耳元に唇を寄せた。

「私は、その気になれば」

 低い、低い声だ。身体の奥底を疼かせるような。

「貴女のことを、思いのままに出来るんですよ」

 詩乃の手首を捕まえる手は、あまりに力強かった。

「どうするんです? 私が……私が、欲望のままに貴女に、触れたら」

 囁くような声が、耳朶を伝って脳を直接震わせるように響いてくる。

 激しい心臓の鼓動が、重なっている。体温が、呼吸が、完全に溶け合った。

 詩乃の身体を貫いたのは、恐怖ではなく——歓喜だった。

「いいよ」

 夢見るように、考える前に口から言葉が滑り降りていた。

「いいよ。好きにして」