「手、おっきいね」

 忙しない心臓の鼓動が聞こえないように、ごまかすように彼の手をきゅっと握る。

 応えるように握り返してくれて、たったそれだけで花が舞い散るような歓喜が胸の中で渦巻く。

「詩乃さんの手は、小さいです」

 そっと答えた明人の声が、思ったよりも近い。

 ひとつの布団の中。同じシーツの上。共有した熱が、爆ぜそうなくらいだ。

 顔を上げると、明人は困ったように目を伏せていた。

 暗闇に慣れた瞳は、愛しい人の表情を全て捉えた。

 途方に暮れていたような表情に、苦悶の色が混じる。

 明人が、溜め息を噛み殺したようだった。

 端正な顔立ちが、苦しそうに歪んでいる——と思った、そのとき。

「貴女という人は……」

 苦しげな声が聞こえた次の瞬間、二人を覆っていた掛け布団は明人によって払いのけられた。