「ねえ、明人くん」

「はい」

 短い返事は、いつものように柔らかく優しげだ。

「もうちょっと、こっち来てよ」

 明人は、反対側のベッドの端で身を縮めている。

 同じ布団の中に入っていても、二人の間には距離があった。

 明人が少し静止したあと、僅かに身じろぎする気配があった。

 仰向けだった体勢が、こちらを向いて横たわっている。

 シーツに置かれた手が、どちらからともなく触れ合う。

(あったかい……)

 明人がもたらす体温は、もうほっこりした温もりではなくなっていた。

 ドキドキが高まって、静寂の中で自分の鼓動だけが聞こえてくる。

 明人の心音さえも、呼吸さえも間近に感じられそうな距離。