「わたしも、明人くんのお料理が一番だよ」

 するりと、思ったことが口から出てくる。

 良いお店の美味しい料理はもちろん好きだが、やっぱり一番は明人の手料理だ。

「帰ったら、またいつも通り作りましょう」

「うん!」

 帰ったら——そのあとに待ち受ける未来を、詩乃はつい反射的に思い浮かべてしまった。

 帰ったらまたいつものように、詩乃の家でごはんを食べて、お茶を飲んで、二人でくつろぐ。

 その日々はまもなく、終わってしまうのだろうか?

 俯いてしまいそうになる顔をなんとか上げて、微笑んで見せた。