美味しい食事をいただいているうちに、普段通りのように雰囲気が解れていく。

 いつものようになんだかんだと話しながら、気がついたら二人とも綺麗に完食していた。

「お茶が欲しくなりますね」

「あ。あったかいお茶、頼もうか?」

 明人の呟きに対して、詩乃が一応ドリンクメニューを見る。

 暖かいお茶はきっとサービスでもらえるだろうが、もしかしたらなにか良い飲み物があるかもしれない。

「いえ」

 明人が、ほんのりと笑いを含んだ声で言う。

「食後は、いつも詩乃さんが淹れてくれるあのお茶が欲しくなります」

「えっ。えへへ。そう?」

 いつも、ごはんの後に飲むお茶。

 明人が食事を作り、詩乃はそれを手伝い、食後は詩乃がお茶を淹れる。

 ずいぶん前から培ってきた、二人の習慣だった。