心の最奥から込み上げてくる、明人を求める気持ち。

 それが生々しい欲望となって、身体の奥底で熱を持ち始めている。

 願いもむなしく、明人はそっと腕を解いた。

 まだ手と手を触れ合わせたまま、潤んだ目で明人を見上げる。

 視線が絡み合った瞬間、明人の頬に、さっと赤みが差した。

「……落ち着きましたか?」

 呟くように言いながら、明人はわざと目線をずらした。

 また、なにかを堪えるような、困ったような、複雑な表情を浮かべて。

「……っ! う、うんっ」

 妙に色っぽい顔にどきどきしながら、こくこく頷いてみせる。

 雷も停電も怖かったのだが、この抱擁ひとつで、なにもかも吹き飛んでしまった。

「あ、あ、あの……!」

 明人の顔を見ていられなくなって、詩乃は思いついたことを咄嗟に口にした。

「晩ごはん……たべよう……!」

「は、はい」

 どちらからともなく、触れ合っていた手を離す。