そしてなにより、喫茶店での甘く濃密なひととき。

 少しからかっただけで、真っ赤になってしおらしくなってしまうのが可愛くてたまらない。

 恥ずかしがっておどおどしている彼女の姿を思い出すと、込み上げるような昂りを感じてしまう。

 自分でも、こんな悪癖は辞めなければとは思っているのだ。

 女性を困らせて楽しむなんて、やってはいけないことだ。

 だが、あの可愛い顔を見てしまうと——

 ここまで考えて、明人はその空想を振り払った。

 あまり彼女のことを考えていると、よこしまな欲望が膨らんでしまいそうだ。

 ただお湯の中にたゆたって、暖かく肌触りの良い風呂を満喫する。

 しかし——なにも考えまいとしていると、つい転勤のことが頭をよぎってしまう。

 今、この件で憂鬱になっても仕方がないのに。

 しかし、告白のタイミングは少し遠退いてしまったかもしれない。

 帰ってしばらくは、旅の思い出話に花が咲くだろう。

 その楽しみを、あえて潰したくはない。