明人はコートを掛けながら、少しほっとした様子で言った。
詩乃が窓の外に目を遣ると、もうすっかり夜の帳が下りていた。
激しい雨が、窓を絶え間なく洗い流している。まさに、春の嵐だった。
「うーん。雷とか鳴ったら、やだな〜」
「雷、苦手ですか?」
「うん。でも、平気だよ! 今、めっちゃウキウキしてるし」
詩乃が、明人の方に向き直る。背中越しの向こうの方にある、大きなベッドが目に入る。
明人が言っていた通り、シンプルなダブルベッドだ。
和室の畳の上にベッドが設えてある、いわゆる和洋室だ。
「コート、けっこう濡れちゃったね」
どきんと跳ねた心臓の鼓動を隠すように、コートを脱いでハンガーにかける。
「ええ。寒くありませんか?」
「大丈夫だよ」
