観光地なだけに、少しタクシーを飛ばせば空き部屋のあるホテルは見つかった。
もちろん選択肢は限られていたが、こんな直前に入れただけでも運が良い。
「い……いやいや! それは、仕方ないよ。突然のことだったもん」
もしかして、嫌なのかな。わたしと同室になるの。
と、明人の様子を見て詩乃は思った。なんだか、残念そうですらある。
「それと……言いづらいんですが」
謝罪するかのような口ぶりで、明人は続けた。
「その……ダブルベッドの部屋しか、空いていなくて」
「えっ」
あちこちに電話をかけて、やっとのことで部屋を予約してくれたのは明人だ。
暴風雨の中、急いでタクシーでここまで来たし、部屋の詳細については知らない。
その瞬間、詩乃の頭の中には、ハート型の枕が二つ寄り添った、ピンク色のレースのシーツに包まれた大きなベッドがポンと浮かんだ。
「私は床で寝ますから、ご心配な——」
「い、い、いいよ別に! 明人くんもちゃんとベッドで寝よ!?」
