いやまあもちろん、そんな暗黙の了解じゃなくて合意はちゃんと取らなきゃいけないけど!
というか、こんな観光地で当日に入れる宿なんてないかな?
いや、観光地でホテルはいっぱいあるんだから、どこかは空いてるのかも?
雑多で混乱した考えが、次々と高速で頭を通りすぎていく。
ハッと顔を上げると、ばっちり明人と目が合ってしまった。
顔から蒸気さえ出そうだ。茹で上がったように真っ赤になって、滑稽なくらいなのが自分でも分かる。
ごめん! なんでもない! と、言おうと思ったそのとき。
「それなら……今夜は、帰しません」
詩乃の顔を真正面から見据えた明人が、はっきりと、低い声で呟いた。
