貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜


 頬が熱くなって、目が潤んできているのが自分でも分かる。

「はい」

 明人が、じっと詩乃の顔を見つめている。

 視線を合わせようと努力はした。でもやっぱり、目は見られない。

「帰りたくない……って言ったら、どうする……?」

(言っちゃった……!)

 どうしよう、と、視線をテーブルに落とす。

 別に、今日恋人になりましょうと言ったわけではない。

 帰りたくないと言っただけだ。

 決してそんな直接的なお誘い——ホテルに行こう——などと言ったわけではないし、それ自体が目的ではない。

 でも、でも、女子が「帰りたくない」と言えば、一般的にはそういうお誘いであることが多いわけで。

 そして男子が「今夜は帰さない」と答えれば、だいたいはそういう合意がある場合が多いわけで。