貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜


 もしかしたら。もしかしたら、どこかで一泊しないかと誘ってくれないだろうか。

 まだ恋人関係でもないのに、明人がそんなことを言いそうにないのは十分分かっているのに。

 甘い期待が、どんどん膨らんでしまう。

「私も、明後日まで休みなので」

 明人の声が、いつもより深く甘く聴こえる。

 それは彼がそう語りかけているのか、詩乃の期待がそう聴こえさせているのか。

「じゃあ……ゆっくり出来るね」

 無難な返事をしながら、詩乃は胸の鼓動が高鳴っていくのを感じていた。

 明後日も休み。二人とも。

 恋人同士であれば、きっとどこかで宿を取るのだろう。

「あ、あのさ」

 ドキドキと、心臓の鼓動がうるさい。