「な、そんな、別になにも考えてないもんっ」

 なんとか言い返すが、顔がかーっと火照っていくのが自分でも分かる。

(やばい。明人くんって、こんなにカッコいい顔してたっけ)

 ドキドキと、胸が高鳴った。探るような眼差しに見据えられると、どうしていいか分からなくなる。

「も、もう。明人くんが、変なこと言うからっ」

 両頬に、そっと両手を当てた。

 熱い。紅潮した頬を見られるのは、恥ずかしい。

「それは失礼しました」

 明人はふっと笑って、少し身を引いた。

 濃密な、男性的な気配が薄まって、少しだけほっとする。

「ですが、詩乃さんはいつも嬉しそうですね。私がこうして"変なこと"を言うと」

「…………っ!」

 ダメだ。顔を上げられない。

 ——バレてたんだ、こんなにドキドキしてること。

 真っ赤に火照った頬を、思わず両手で包んでしまった。ばっちりメイクして、さっきも直したばかりなのに。