突然握られた手の大きさに、どくんと心臓が跳ねる。
暖かい手が、汗ばみそうだった指先を包んでくれた。
優しいけど、間違いなく男の手。節々が頑丈で、詩乃のそれよりは少しかさついていて、分厚く、力強い手だ。
明人は自分よりもずっと背の低い詩乃の歩幅を気にしながらも、早足で目的地に向かった。
(こういうとき、明人くんって判断が早いなぁ……)
雨は強くなっていった。急な雨に耳や頬が冷えていく一方で、胸の内はのぼせそうに熱くなっていく。
(もう、いちいちドキドキしちゃう)
優しく手を引く明人の顔を、まっすぐ見られなかった。
ほどなくして、二人は近くの喫茶店に滑り込んだ。
店内は急に客足が増えたようで、入口付近に人集りが出来ている。
二人は運良く、ほとんど待たずに席に案内された。
「濡れませんでしたか?」
強い風と雨に見舞われて、さすがに髪や肩の辺りは少し冷えてしまったようだ。
しかし、暖房の効いた店内は、ほっこりと暖かかった。
