初春の陽が、もうそろそろ傾き始める頃。

 あのあと昼食を挟んで、二人はほとんど休みなく散策を続けていた。

 気がつけば、ずいぶん暖かくなってきている。着込んでいるので、暑いくらいだ。

 突然、厚く垂れ込めた雲から、雨が降り始めた。

「えっ。夕立ち? こんな時期なのに」

「春一番ですかね」

 急いで折り畳み傘を広げている間にも、空はみるみる暗くなっていく。

 ぽつりぽつりと、大粒の雨が石畳を打った。

 観光客たちも、慌てて近くの店に駆け込み始めた。

「どこか、入りましょう」

 明人はスマホで何やら調べて、すぐに詩乃に向き直った。

「この先に、喫茶店があるようです」

 明人が、すっと詩乃の手を取った。

「!」