「ねえ見て見て! 民芸品がいっぱいあるよ」
はしゃいだ詩乃が、土産物屋の店先につつっと駆け寄る。
「こういうの、おうちに飾ろうかな。あ、キッチン用品とかないかなぁ」
店先に並んだ品物を眺めながら、詩乃がなにやら考え込む。
「どうしたんですか?」
「うーん。これとかいいかなって」
明人が手元を覗き込むと、詩乃は箸置きを手に取って見せた。
錫色の石に、美しい差し色が入ったような意匠だ。瑠璃色のと、唐紅色ので一揃いらしかった。
「綺麗だし、箸置き欲しかったんだよね。これ、明人くんの分ね」
瑠璃色の線が刻まれた箸置きを手に取って、詩乃が満足げに笑う。
「といっても、うちに置いとくけど。帰ったら、これ使おうね」
「……はい」
嬉しそうに品物を選ぶ詩乃を見て、明人は優しく微笑んでいる。
「もらったお茶碗と、合いそう」
また、二人で使う物が増えた。箸置きを包んでもらいながら、詩乃はこっそり胸の内を熱くした。
